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技術翻訳者のメモ帳から――日本語独特の曖昧さの表現

和英翻訳の醍醐味

それゆけ!
By Simon Davison (CC)
和英翻訳の仕事は、当然、英語圏の人たちに読まれることを前提として、英語を書く仕事ですので、ネイティブと同等レベルの、自然な英語を書かなくてはなりません。日本人の翻訳者が、ネイティブレベルの英語を書くのは、はっきり言いますと、極めて難しい作業だと思います。しかしながら、努力によっては、限りなくネイティブのレベルに近づくことができることは事実です。
別のエッセイでも紹介しましたが、ネイティブと接する時間を多く持ち、ネイティブの考え方の 「 真髄 」 を少しでも多く 「 吸収 」 し、自分のものにするという日々の努力が必須となると思います。
しかしながら、ネイティブに匹敵する高いレベルの英語の表現力を養ったとしても、実際に和英翻訳を行う際に経験する、次なるハードルがあります。私は、日本語という言語の意味体系を、英語という言語に 「 移植 」 させる作業の難しさを感じる場面を何度も経験しました。別の言い方をすると、スペイン語から英語への翻訳作業の難易度と、日本語から英語への難易度を比較すれば、後者が遥かに高いと言えます。周知のとおり、日本語には、「 曖昧さ 」 を含意した単語が多く存在します。それに対し、英語の文章は、 「 的確さ 」、「 具体性 」、「 イエスかノーか 」、「 白か黒か 」、「 論理性 」を要求します。
技術翻訳という分野では、日本語の原稿には、日本語独特の 「 曖昧さ 」 や 「 不明瞭さ 」 が極力排除されていますが、時としてこうした問題を含む文章を目にすることがあります。17年前に職場の同僚であった英国人翻訳者R氏は、和英翻訳を行う際に、こうした問題に加えて、「 てにをは 」の問題にも、常々悩まされていたようです。彼は日本語の原稿を私に見せて、「 この文章を英語で説明してくれないか? 」 と、常々私に質問しました。私が英語で説明しても、「 でも、その通りの文章を書いたら、英語としておかしいよ。前の文章と論理的におかしくなっちゃう 」 なんて言う答えが、しばしば返ってきました。困り果てても、R氏は持ち前の文章力で、いつも何とか切り抜けていました。
私は、幸いなことに(?)日本語のネイティブですので、外国人よりは日本語の真髄を把握しているつもりです。ですので、日本語の原稿を一度読んで、意味を吸収するという作業は、問題なく行えると思います。あとは、その意味を損なうことなく、英語のフォーマットに移植させてゆくという作業を行うのですが、完璧に行うために必要なのは、ネイティブの持つ 「 感性 」なのです。言語のスペシャリストとして大成するための 「 言葉の旅 」 は、まだまだ終わりません。

訳し方に困る日本語

メリーゴーランド
By
David Sifry (CC)
和英翻訳を行うときに、過去に何度も目にしては訳し方に困惑し、現在でも頭痛の種となる代表的な日本語に、「 意識 」、「 自己啓発 」 という言葉があります。
マニュアル等の技術翻訳では目にしませんが、メーカーなどの社員教育や、社内の報告書などに度々出てきます。
例えば、下記のような文章です。
  • 「 作業状況を確実に把握できるよう作業表を改善し、掲示しグループ員の意識付けを行いました。 」
  • 「 作業者間に競争意識をもたせ、自己啓発を促せるよう、個人別グラフを掲示しました。 」
  • 「 従来よりも改善活動が活性化され、目標に対して前向きに活動されるようになり、自己啓発意欲も高まり、職場が活気づきました。 」
こうした文章を目にしますと、私の実力では、途方に暮れてしまいます。
「 意識 」 を和英辞典で引けば、真っ先に 「 consciousness 」と載っていますから、この単語を使えばいいのでしょうか?そもそもこの場合の 「 意識 」 とは、何なのでしょうか?また、「 自己啓発 」 は、近年日本では使い古された言葉ですが、生憎、私の和英辞書には載っていないばかりか、日本語大辞典 ( 講談社 ) にも広辞苑 ( 岩波書店 ) にも載っていません。きっとバブル期あたりに生まれた造語なのではと思います。どうしたらいいのでしょう? 「 自己啓発セミナー 」 なんていう言葉は聞いたことありますが、どんなことやるのでしょうか?
これら2つの言葉は、日本語ならではの抽象概念が満載で、使い方で色々な意味を持ちますので、逆に日本人には使い勝手が良いのでしょう。でも翻訳者泣かせの言葉ですね。
過去に、某翻訳会社のトライアルを受けたときに、上記の文章に似た問題文があり、「 consciousness ( 意識 ) 」、「 self-training ( 自己啓発 )」 を多用したところ、見事不合格でした。どうやら、別の言葉を駆使して訳すより他はないようです。皆さんならどうしますか?


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