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医療 ・ 医薬翻訳者の真の役目

女医
By
Meyshanworld (CC)

1774年( 安永3年 )、日本最初の本格的な西洋解剖学書の訳本 「 解体新書 」 が刊行された。元はドイツ語であった解剖書 「 ターヘルアナトミア 」 のオランダ語訳医書を、さらに日本訳したものである。かつて翻訳に携わった者 ( 杉田玄白 ・ 前野良沢 ・ 中川淳庵 ・ 桂川甫周ら ) の中でも中心的存在であった玄白と良沢は両者とも医師ではあったが、オランダ語の知識は十分に持ち合わせていなかった。それに加えて、当時は満足のいく辞書もなかったため、玄白 ・ 良沢らは翻訳に3年半もの年月を費やし、改稿は11回に及んだようだ。こうして、不完全ながらも、一時代を画する医学書全5巻の刊行に、ようやくたどり着いたのである。

このようにして、日本は他国から医学の知識を学び続けて現在に至るのであるが、医学専門知識と語学力の学術を持ち合わせている人が全く存在しなかったと言ってもよい当時の苦労は、今の私たちには想像できないほどであろう。この解剖書の翻訳の成功は偉業として世間で高く評価され、以後日本ではあらゆる医学書の翻訳が活発となり、医学の発達に貢献するようになった。また、これを契機に蘭学が誕生したり、西洋文化を幅広く受け入れるようになったりした。このことをとっても、この翻訳書の刊行は日本に大きな影響をもたらし、歴史上重要な位置を占めているのである。

戦後、様々な分野で飛躍的成長を遂げてきた日本は、医療 ・ 医薬の発達が最も進歩している国の一員として活躍している。つまり、現代の医療・医薬翻訳者は、他国における医学の進歩を日本に紹介する役目に加えて、 それを他国に伝えるという役目も果たすようになってきたのである。英語を国際語とする近代社会において、医学専門知識と和英 ・ 英和翻訳の学術を備えている翻訳家は、日本にとっても世界にとっても非常に大切な存在であると言えよう。しかし実際のところ、米国で新しく発見された医療技術や医薬製品などには、まだ適切な日本語が確立されていないことなども多々あることが現状だ。日米間の医療 ・ 医薬制度や概念の違いによって、翻訳の難しさに苦労する翻訳者は少なくはない。

薬
By Kim Baker (CC)
医学業界の更なる展開とともに、医療機器、医薬製品、または医学学術論文などの翻訳需要の全体量が急速に増大してきたが、現代技術の発達によって、翻訳ソフトやデータベースを使用してより短時間での翻訳が可能になってきた。しかし、この先これらの翻訳ツールに医療・医薬翻訳者の仕事全てを取って代わられるようになることはないであろう。3年半と11回の改稿を経て遂に完成した 「 解体新書 」 のように、現在も医療 ・ 医薬分野では正確で緻密な翻訳が必要とされており、それほど医学翻訳者の責任は重大なのである。

つまり医療 ・ 医薬翻訳者の真の役目とは、日本はもちろんのこと世界中で医学の進歩の手助けをし、より良い社会へと貢献することである。これは数百年も前から変わっておらず、これからもその役割を担い続けるのだ。


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