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『 活きた翻訳を目指して ( 日英翻訳 ) 』

手術
By
Artur Bergman (CC)

一概に医療翻訳といっても、その内容は多岐に渡る。学術研究論文はもちろんのこと、治験レポート、医療機器解説書、ひいては個人の健康診断書や保険契約書まで、幅広く細分化された各分野における専門家たちの成果と熱意を伝える―それが医療翻訳家の仕事であり愉しみであり、いわゆる特権であるとも言えるだろう。

翻訳の質をより高めるために。
極めて基本的なのだが、これを自らの課題としながら何年か経つ。
『 語彙力を増やす 』--もちろんである。医学は解剖学用語だけでも一言語の辞書一冊分に相当するくらいということだから、ボキャブラリーが十分でなければあわや最初からつまずいてしまうということにもなりかねない。
『 知識量を増やす 』--これもまたしかりだ。言うまでもなく医学の躍進は著しい。最新医療に久しくして、最先端を綴る原稿の何たるかを理解し訳すというのはきわめて至難の業だ。
『 納期を守る 』--当たり前だが、原則だ。納得のいくものを定められた期間内にきちんと収めること。これはクライアントや同僚に対するプロとしての礼儀である。( 少なくともそう心がけているつもりである )。
『 原文には忠実に 』--翻訳が翻訳でありうる必要最低十分条件といえば、この一言に尽きるだろう。翻訳者たるもの、あくまで正確に内容を伝えることこそが本分でありそこに例外はない。

以上を大前提とした上で、あえてここでは翻訳の『 質 』そのものに焦点をおきたい。

せっけん
By
Woodley (CC)
『 センテンス、パラグラフの構成、文章のバランスやメリハリはどうか 』
言葉を一語一句置き換えるだけでいいというのであれば、翻訳ソフトと分厚い医療辞典を駆使して難なく事が済んでしまう話である。しかし、いかに科学的 / 医学的なテーマを扱っているとはいえ文章は文章なのだ。原文をきちんと抑えつつ、かつリズム感とワードチョイスに配慮しながら、分かりやすく読み心地のよい文章を作り出していきたい。そのためには何度も繰り返し読み返し、時には声にも出してみて全体の流れを確認するという地道な作業が必要になる。

また、それぞれの言語において「 好ましい文章の構成 」は違う場合があるということを常に念頭に置いておかなくてはならない。例えば、日本語医療原稿の概要で前置きから結論に至るまでの過程を英訳する場合、そのまま句読点ごとに訳してしまえば要点の極めて見えにくい、どこか間延びした印象の英文になってしまうことがしばしばある。そのような時には、文章の意図するところをきちんと把握した上で、記述の前後を入れ替えてみたり、重要点が明らかな場合はあえてそこを強調するような語彙( 動詞や形容詞や接続詞 )を選んだり、時には読み手の混乱を招きそうな長い一文を二文に分けてみるなどの機転がスマートな解決策に繋がることもある。

『 原文の意図するところをきちんと見極める 』
その分野の知識が豊富であるないにかかわらず、内容自体が捉えにくい記述に出合うこともある。主語が明白でない場合や、形容詞がどこにかかってくるのかが曖昧な場合。また、時制がいまひとつはっきりしない場合などがそうだ。つまり、日本語ではあえて曖昧でも構わない、しかし英語ではそうはいかないという状況である。もちろん、前後の文章やパラグラフからおおまかな推測をすることは可能だ。だがそれに甘んじてしまうというのは、思いのほか危険なことでもある。
いかなる疑問点もチームに報告し、校閲時には一つ残さずクライアントに確認すること、そういった細やかさと誠意をもって仕事ができたら仕上がりは自ずと気持ちのよい出来になる。翻訳者もコーディネーターもクライアントも。コミュニケーションを惜しまずに尽力し、互いに満足のいくものが生まれたら、それは純粋にかけがえのない喜びであることは確かだろう。

『 幾つもの目を通す ( 新鮮な目 ) 』
いかに数多く翻訳をこなそうとも、ミスというものはありうる。スペルのミス、文法のミス、ひょんな勘違い…。きちんと気をつけているつもりでも知らぬ間に落とし穴に嵌まり込み、そこで運よく気がつけば良いのだが、単純で小さいからこそ見落としてしまう、そういったミスがどんなベテランにもある時はあるのだ。
訳が仕上がったからといって速納品してしまうのではなく、最低数回の読み返し、例えば仕上がり後一息ついてから一度、食事の後リラックスしてからもう一度、更には半日後あるいは一日経ってからダメ押しでもう一度、気分をまっさらな白紙に戻した状態で読んでみると、先ほどは見逃した誤りや意外な改善点に気が付いたりするものだ。( もちろん、締切日ギリギリに仕上げを設定しまうとそれは難しいのだが )そうやって納品までこぎつけたのち、さらに第二の翻訳者( あるいは複数の )、別の人間の目を通すことの重要性についてはいうまでもない。
視点を変えてみながら何度もチェックすること。ある意味それは、全工程を通して最も気の抜けない作業なのかもしれない。たとえそれがネイティブ自身による翻訳だったとしても、丁寧なプルーフ ・ リーディング ( 校正 )あるいは経験豊富な専門家による校閲なしでは完全とはいえない、そう常日頃感じ入るところである。

中世医療
By
Hans Splinter (CC)
活きた翻訳をしたい。
そう思うようになったのは、これまで数多くの優秀で魅力的な原稿に出会ったからだ。そのほとんどは長年の研究の集大成であり、( 医療の場合は特に )どれも命を扱う崇高な内容だった。それらの尊さを、翻訳によって色褪せさせてはならない。むしろ、原稿を生き生きとしたまま届けたい。その価値を多くの人に伝えたい。そう心から望んでやまない。
国がより開け、多国間にまたがるあらゆる情報が行き交うようになり、日本でも複数の言語を自由に操れる人材が簡単に見つかるような時代になった。
だからこそ、あえて今『 質 』を追求する努力をしたい。
言語の壁が透明になる時代。そんな未来はきっともうすぐそこまで来ているに違いない。






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