日本語 ⇔ ベトナム語 翻訳テクニック2
日越辞書
ベトナム国内には、信頼することができる良い日越辞書が存在しません。
初・中級ベトナム人翻訳者は、ベトナム語に翻訳された日中辞書を使用しています。しかし、信頼度に欠ける辞書であるため、上級翻訳者が利用するには全く向いていません(2011年4月時点)。
そこで、上級ベトナム人翻訳者は、日 ・ 日辞書を利用しています。もちろん、ベトナム語文章を日本語へ翻訳するときに必要な専門用語や日本の会社名などについては、辞書ではなくインターネットなどで検索して正確な訳をしています。
≪例≫
「ベトナムのA社が、日本のSanyo社と契約締結した」というベトナム語を日本語に翻訳するときには、「Sanyo」が、「サンヨー」・「三洋」・「山陽」・「三陽」のうちのどれなのかを正しく調査する必要があります。
文化の相違(日本とベトナム)
日越文化の相違により、翻訳時に注意しておきたい点がいくつかあります。
- 人名・地名のカタカナ表記
ベトナム語を英語へ翻訳する場合には、人名や地名などの名詞はローマ字表記にして、読み方は読者にまかせます。しかし、和訳をする場合には、発音をカタカナにする必要が生じてきます。
ここで注目しなければいけない点は、同じ名称であっても、北部・中部・南部の方言によって、ベトナムでは発音が異なるということです。
≪例≫
ベトナム首相のNguyen Tan Dung氏は、ベトナム北部の発音では「Dung=ズン」ですが、ベトナム南部の発音では「Dung=ユン」となります。
通常資料などでは標準語である北部(ハノイ)の発音でカタカナ表記をしますが、広告文などを翻訳する場合には、その地域の発音に合わせることが多いため、翻訳をおこなう前に、どの地域の発音表記にするべきなのかを確認する必要があります。
- 数字を区切る記号の違い
日本や欧米では、通常数字を「1,000,000,000」と記載しますが、ベトナムでは、これを「1.000.000.000」と表記します。数字を区切るときの記号が、日本と欧米では「,」であるのに対して、ベトナムでは「.」を使用するのです。
少数点でも、同じような違いが見られます。
日本や欧米では、「1.0」としますが、ベトナムでは「1,0」となります。
通常の翻訳であれば、日本の数字表記をベトナム数字表記になおす必要があります。しかし、数字が非常に多い場合(設計書など)には、数字がテキストデータではない場合もあるため(画像中に含まれてしまっている場合、ベトナム数字表記になおすと何かしらの漏れが発生する危険性がある場合、事実上表記変更が不可能な場合など)、あえて数字表記をなおさず、日本の数字表記のまま使用するケースも多々あります。ただし、その場合には、本文書は日本の数字表記になっている旨、資料に目を通す読者に伝える必要があります。
- 住所を翻訳する場合
文中に住所が含まれている場合、下記の点を踏まえて翻訳するか否かを判断する必要があります。
- 単に住所を「理解させる目的」であれば、翻訳しても構いません。
≪例≫
Ho Chi Minh City, Vietnam → ベトナム国ホーチミン市。
- 何かを郵送する目的であれば、ベトナムの住所はローマ字のままし、日本語の住所をベトナム語に翻訳する場合は、英語表記にします。
≪例≫
Ho Chi Minh, Vietnam であれば、「ベトナム、ホーチミン市」などと翻訳せず、ローマ字のまま郵送します。
日本語の住所「東京都○○」などは、英語表記にして郵送します。
- 日本語表記の数字
≪例≫
「1万5千円」など日本語特有の表記になっている場合は、ベトナム語の文字にせず、15.000 JPYと翻訳します。
- 日本の元号
日本の「昭和」や「平成」などを、ShowaやHeiseiとしても、ベトナム人読者には理解できません。必ず西暦表示へと変換します。
- 文書スタイル
一般文書では、分かりやすい翻訳文章へと仕上げるため、できるだけ長文はさけ、短文で表現するように心がけます。特に技術設計書などでは、短文が基本です。公式の文書では、敬語を使用するなどして丁寧な文章にしましょう。専門用語(特にカタカナを使用するもの)は、英単語のまま使用しても問題ありません。無理にベトナム語にしてしまうと、かえって誤解を生む可能性がありますので注意が必要です。
上記「 日本語 ⇔ ベトナム語翻訳のテクニック 」の一部を簡単にご説明しました。少しでも、ご理解いただけたら幸いです。
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