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国産ソフトウェアの英文ドキュメンテーション――その必要性と翻訳作業について

橋 ( 印象派風 )
By
John Morgan (CC)
技術大国と言われている日本の製品は、世界中で高く評価されています。IT関連の製品でも日本はICチップ、産業用ロボット、パソコン及びその周辺機器などで高い品質と技術力を発揮して世界の国々で奮闘しています。しかし同じIT分野でもソフト関係の製品はどうでしょう?現在世界のソフトウェア市場を見てみますと、アメリカの企業がその大部分のシェアを占めています。パソコンのOS( オペレーティングシステム )を取ってみますと、MS Windows と Mac OS の二つが世界中の全てのシェアを握っています。企業が使用する中型機や大型機で使われているOS( UNIX や OS/390 )も、 IBM、SUN、HPなどのアメリカ企業が独占しています。ワープロや表計算のソフト、またデータベースのソフトもしかりです。 企業を対象にしたアプリケーションシステム( 適用業務システム )はどうでしょうか?この分野でもアメリカ製のパッケージ化されたアプリケーションシステムが世界市場の大勢を占め、IT技術大国である日本にまで売り込みをかけ、かなりの成功を収めています。

筆者は海外で20年以上IT関連の仕事に携わってきましたが、日本製のソフトは海外市場で全く見る事はありませんでした。例外として子供向けのゲームソフトが良く売れていますが、これだけでは寂しい限りです。優秀な人材が集まる日本のIT産業が開発したソフトがアメリカ製のソフトに劣るとは考えられません。現にハードの面ではアメリカのみならず韓国やヨーロッパ諸国の製品と互角以上の闘いをしています。それではこのソフト不振の原因はなんでしょうか?  

ソフトウェアを企業に売ると言うのは、大変な仕事です。優秀なセールスエンジニアを確保する事はもちろん重要です。サポート体勢も整えなくてはなりません。しかしソフトウェアという物は製品自体を見せたり展示したりする事が出来ません。ソフトの機能を実演する事は出来ますが、時間やデータの制限で全機能の一割でも実演出来れば良いほうでしょう。買い手企業から見れば、ソフトウェアほど購入時にたくさんの質問や疑問が湧き出る商品はないでしょう。車や電化製品と違ってソフトウェアは買ってすぐ使えるものではありません。ソフト購入の後には、ハードウェアの購入又はアップグレード、システム導入、データ変換、事務手続きの変更、ユーザートレーニング、テスト、システムメインテナンスなどの大きな作業が待ち受けています。この様な作業をするに当たって、絶対に欠かせないのがシステムドキュメンテーションです。システムドキュメンテーションには、システム概要、システム機能説明書、ユーザーマニュアル,インストレーションマニュアル、オペレーターマニュアル、トレーニングマニュアル、メインテナンスマニュアルなどが含まれますが、どれか一つが欠けてもシステムをうまく立ち上げるのは無理となります。 

ルート66
By Chuck Coker (CC)
さて、日本製のソフトは海外市場でほとんど見られないと言う問題ですが、一番大きな原因として考えられるのは、システムドキュメンテーションの英語版が存在しない事です。日本では欧米製のシステムを立ち上げる場合、日本語版のシステムドキュメンテーションが無い場合が良くあります。それでも日本のシステムエンジニア達は辞書を引きながら英文の各種マニュアルの内容を理解し、なんとか仕事をこなしています。しかし欧米諸国のシステムエンジニア達が、日本語版のマニュアルをもとに仕事をする事は絶対に無理と言ってよいでしょう。考えて見れば日本の優秀なソフト製品 - 特に日本で既に成功をおさめた製品 - が単に言語の問題で、そのマーケットが国内だけに限られていると言うのは大変に残念なことです。もしこのようなソフト製品のドキュメンテーションが全て英文に翻訳されていれば、その製品の海外市場での可能性は非常に高まります。ここで言う海外市場とは、英語文化圏だけでなく世界の殆んどの国と言ってよいでしょう。なぜならば、今世界のIT業界では、英語が標準語となっているからです。

それでは実際にどのようなソフト製品を対象にし、どのようにドキュメンテーションを英文化すれば良いのでしょうか?単にソフト製品と言ってもその機能、使用目的、規模、ユーザータイプ( 個人、中小企業、大企業 )などにより、いろいろな種類が存在します。先ず、OSソフトや個人・企業向けの汎用ソフト(ワープロ、表計算、インターネットのブラウザーなど)については、いくら優秀な日本製のソフトが存在していても、海外市場で成功することは、少なくとも短・中期的には不可能と思われます。これは Microsoft、Apple、IBMなど既存の大企業がこの分野で独占的地位を占め、この状態は簡単には崩れるとは考えられないからです。また同じ理由でデータベースやネットワーク管理用などのシステムソフトウェアで成功する事は難しいでしょう。日本製ソフトで可能性が高いのは、パッケージ化されたアプリケーションソフトです。アプリケーションソフトはビジネス、製造、エンジニアリング、科学、教育、医療、法律、行政、エンターテインメント、一般家庭など非常に広範囲の適用分野で使われ、要求されるシステム機能も多種多様です。それ故、必要な機能を備えた高品質のアプリケーションソフトは、国内外を問わず必ず需要があるものです。またアプリケーションソフトの規模の面から見ると、インターネットを通じて不特定多数のユーザーを対象に売り込む数千円の単機能ソフトから、大企業を対象とした数億円の包括的な業務処理ソフトまでまちまちです。ここで英語版ドキュメンテーションの必要性ですが、前者の場合は少数のスクリーンの言語変換、簡単な機能説明、ユーザーマニュアル、インストレーションマニュアルと数ページの和英翻訳で済むでしょうが、後者の場合はシステム導入・運用・保守に必要な全ての情報を含んだ数十巻からなる英文ドキュメンテーションが通常必要とされ、和英翻訳の作業も数名からなるプロジェクトとして管理されます。しかし両者について共通に言えることは、適用分野に関係なく、ユーザーはそのソフトの導入、運用、保守に際し常にドキュメンテーションに頼っていると言う事です。故に、日本語版ドキュメンテーションを英語翻訳する際には、的確な英訳語を使用して明確さと正確さを期することが非常に重要となります。

少女
By Trazomfreak (CC)
残念ながら、日本のIT技術者で高品質の技術英訳を出来る方は非常に少ないと思います。またこの様な人材がいても、ソフト開発・導入など本来の仕事に忙しく、英語へ翻訳している時間が無いのが現状でしょう。もし長期的にコンスタントな需要があれば、技術者を翻訳専門の社員として雇い入れることが考えられますが、この様な必要性は、ソフト専門の大企業でなければ起こらないでしょう。そこで一つの解決策として、技術翻訳の専門家又は会社を必要に応じて雇い、英文ドキュメンテーションを作成するオプションがあります。この様な専門家は、翻訳自体はもちろんのこと、その専門分野で日英両方の言語で技術経験を積んでおり、原文内容を理解しながら翻訳の作業を行うので、高品質の英語翻訳が期待できます。さらに彼等は英文校正作業などの為に、英語を母国語とした人とチームで働くので英語らしい正確な表現が保障されます。

最後に、ご存じの方も多いと思いますが、ドイツにSAPというソフトウェアの会社があります。SAPは各種業務用アプリケーションパッケージを開発し世界中の中・大企業に販売・導入しています。このソフトの分野では世界最大の会社でアメリカや日本でも大きな業績を誇っています。非英語圏のドイツの会社がこれだけの成果を上げられるのなら、IT技術の最先端を行っているわが国のソフト製品が海外に躍進する事が無理だとは、筆者には考えられません。


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