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国際取引と英文契約書の翻訳 ( 英日 ・ 日英 )

アシカ
By John Morgan (CC)
契約書のことを英語ではcontractと言いますが、contractはagreementと言い換えることも可能です。Agreementは同意という意味でもありますが、このことは、すなわち、契約とはサインする人がその内容に同意するということに他なりません。契約書に次のような一文が条項として入っているのを見受けます。 ( 例 ) This Agreement is the final, complete and exclusive agreement of the parties with respect to the subject matter hereof and supersedes and merges all prior discussions between the parties. この一文が意味するのは、契約書に書かれている事柄がすべてであって、契約締結に向けてこれまでに時間をかけて心血を注いで話し合われてきたすべての事柄が、契約書に凝結されるという意味です。このことは、取りも直さず、主張すべき事柄はきちっと契約書に相手方に理解できる内容で明記しなければならないことを意味しています。当たり前のことを言っているように聞こえますが、日本人の間で良く耳にする 「 あれだけ話し合ってきたのだから心が通じていると思う。敢えてそこまで定義する必要はないだろう。事が起きれば話せばわかってもらえる。 」 という主観的な「以心伝心的な要素」を重んじる日本人特有の考え方は、客観性を重んじる国際契約書という観点からは禁句と言えるでしょう。国際化が急速に広まりつつある現在、意思疎通の手段としての言語や慣習 ・ 文化的背景が異なる人と取引を行う機会が急速に増えつつあります。すなわち、国際取引では 「 以心伝心的な間柄 」 という考え方は通用せず、常に客観的 ・ 合理的な視点で以って物事を取り決めていくことが求められます。言語や慣習 ・ 文化的な背景が異なる人と取引をする機会が増えるにつれ、共通の言語の必要性が生じてきますが、国際取引の場合には英語が共通言語として使われる場合が、圧倒的に多いのが実情です。言語や慣習 ・ 文化的背景が異なる人と取引をする場合、物事に対する考え方や取組み態度が自分達とは異なる場面に往々にして遭遇します。普段、当たり前と考えていることがそうでなかったりします。そのような境遇の中でビジネスや取引をするには、どうしても 「 共通の認識 」 が必要となってきます。言葉はその土地の歴史 ( 慣習 ) ・ 文化の産物なので、その中で生活をしている人々は意識せずして、物事を判断する思考回路においても、その土地の言葉の影響を受けてしまいがちになります。翻訳作業の場合、 「 言葉は文化そのものから醸成されているので、その言葉の持つ背景を常に考えながら翻訳しないと意味をなさなくなる。 」 ということを念頭に置いておく必要があります。 例えば、日本語で頻繁に使われる 「 宜しくお願いします 」 「 社会人 」 という表現や言葉はその典型ともいえるでしょう。「 宜しくお願いします 」 は西洋人にとっては、何を求められているのかが、漠然としていて把握できかねます。 また、日本語では 「 社会人 」 とは何を意味するかを理解できても、これをそのまま直訳的な表現で英語に置き換えてしまうと、西洋人には理解できなくなってしまうことがあります。赤ん坊は 「 おぎゃー 」 とこの世に生まれた時から社会の一員と考えられ、社会の一員 ( 社会人 ) として受け止められているからです。そもそも国際契約の概念は西洋から伝達されてきたものであるので、その文化的背景をしっかりと見極める必要があります。

取引が発生するところには契約が成立します。 通常、国際取引 ( 国際契約 ) の要として、お互いに同意する内容をまとめた英文契約書が交わされることになります。その場合、上述した事柄をしっかりと心に留めておかなければなりませんが、ここでは、国際契約書の翻訳に携わる立場から、私自身が注意している事柄を幾つか挙げておきます。

1) 法律的な解釈の英語

走る
By Kevin Stanchfield (CC)
普段は見慣れている英単語でも、法律的には違った専門的な解釈がされる場合が多々あります。ちょっと詳しい英和辞書を手にとってページをめくればすぐに気づきますが、普段、頻繁に使われている英単語でも、その意味を丁寧に追っていくと、法律用語としての解釈・意味が別に定義されています。契約書 ( 英文契約書 ) の翻訳に携わる場合、一つひとつの英単語や英熟語の意味を法律用語としての母国語 ( 日本語 ) に置き換えて定義する ( define ) 訓練の積み重ねが要求されます。特に、契約書の場合、主観的である修辞的な紛らわしい言葉や無駄な言葉は、契約という本来の目的にそぐわないために省かれているのが普通です。要素 ( element ) としての言葉のみが効果的に使われることになりますので、それらの言葉を自国の言葉に置き換えた場合の意味を一つひとつ厳格に吟味する作業の積み重ねが要求されます。

2) 各条項の持つ意味合い ( 目的 )

契約書では意味のない条項というものは本来一つもありません。すべてが要素 ( element ) として定義されています。契約書全体の中でその条項の持つ意味合い ( 目的 ) を的確に把握することが翻訳者にとっては必要不可欠な条件となります。また、その条件が満たされることによって、英語から日本語へ、日本語から英語へという翻訳作業を行う場合に、 「 翻訳の質 」 となって反映されます。契約書の背後にある取引の全体像の中で、 「 何を目的 」 として、あるいは 「 何を想定 」 して定義されているのか、さらには何故その言葉が要素 ( element ) として使われているのかの明確な理解と把握が(英文)契約書の翻訳作業には求められます。

3) 英文契約書の書式 ( format ) と和文契約書の書式

英文契約書の書式 ( format ) は、和文契約書のそれとは異なります。例えば手紙の場合ですと、典型的な和文の手紙は「拝啓」から始まって季節の挨拶に触れ、起こし言葉、本文、結びの言葉、 「 敬具 」 で締めくくられますが、これをそのまま英文に翻訳しますと意味をなさなくなってしまいます。これは和文の手紙には和文の、そして英文の手紙には英文のそれぞれ長い歴史の中で培われてきた独自の歴史と文化背景を反映した書式が培われてきたからに他なりません。意味のある翻訳を行うにあたっては、常に、歴史と文化背景の違いを念頭に置きながら書式 ( format ) に則って翻訳する必要があります。

4) 法律的な思考 ( 論理性 )

「 契約 」 という概念から始まり、 「 法律学 ( 法学 )」 という学問の分野が長い歴史の中で人類の英知として確立されてきました。すなわち、これまでの長い経験の積み重ねの中で創り上げられてきたある一定のルールの論理性の中で、厳格に要素 ( element ) としての言葉が使われているということを認識する必要があります。 ( 英文 ) 契約書を翻訳する場合には、法律的な解釈、論理性、その言葉が意味するものの目的を的確に汲み取り、それを要素 ( element ) としての言葉に変換しながら、日本語なり英語に翻訳する技能が要求されます。

5) 日本語と英語

日本語と英語は、それぞれの言葉が培われてきた歴史と文化的な背景が異なるために、一つ一つの言葉が完璧に他国の言葉に置き換えられるということは、あり得ません。 特に、文学的な表現となってくると顕著にそのことが言えますが、法律的な思考に基づいた契約書では、他国の言葉に翻訳された場合に曖昧となる部分はなくさなければなりません。その為には、その土地の固有の文化として育まれてきた部分を契約書文中から削り取り、お互いに共通する認識の部分で以って、要素 ( element ) としての言葉で内容を定義する必要があります。従って、要素 ( element ) としての言葉を日本語と英語で定義する訓練を日々積み重ねる努力が翻訳家には求められます。すでに項目1)の箇所で述べましたが、要素 ( element )として使われている一つひとつの英単語や英熟語の意味を日本語に置き換えて定義する ( define ) 訓練の積み重ねが質の高い翻訳作業には求められます。また、日本語から英語に置き換えて定義する訓練についても同じことが言えます。何故なら、契約書には無駄のある言葉は一切使われていないので、一つとして誤訳は許されないからです。


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