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日本語と英文契約書 : 日米間の契約スタイルの違い

オウム
By Dawn Endico (CC)

行き先
By Reverend
Luke Warm (CC)
 そもそも契約とは何かというと,歴史的普遍的な答えがあるかわけではなく,時代により,また国により異なります。しかし,国も言語も異なる者が取引する場合,金額や履行方法を含んだ何らかの 「 約束 」 をしなければなりません。これを,一般に契約といいます。問題は,だれが草案を作成するかですが,通常取引上優位にある当事者が草案を提示します。そのような当事者が米国に本拠地を有する会社であればその会社の担当者又は弁護士が英語で作成した契約書を、例えば日本法人の代表者に提示します。そこで内容把握に不安があれば翻訳会社に和訳を依頼することになります ( 妥協案として正文を2カ国語として併記する方法がありますが,両者が矛盾した場合一体どちらが優先するのか規定しないと収拾が付かないので,結局意味がないことになります-つまりどちらか一方が翻訳文の性質を有する結果となる )。この場合は,何が書いてあるかが分かればそれで足りるというのが通常のクライアントの要求ですが,条文の削除又は追加を要求することもあります。
 上記とは逆の場合,例えばサプライアーが日本法人の場合は,草案は日本人が 「 日本語で作成します 」 が,取引には通常は作成した契約書草案を英訳したものを使います。しかし,英文契約書であってもソースが日本語なのでここでミスマッチが発生します。日本人は,契約は一度約束してしまえば義務者がその良心に基づき履行してくれると信頼するので 「 内容は基本的なものに留め 」,しつこく契約書に書かないのです。相手方が義務の履行を怠っていてもその履行を強く迫るということはあまりしません。日本人の契約書はその分量が極めて少ないのが特徴です。そして,契約の末尾に 「 協議 」 という見出しで,「 紛争が発生した場合は,当事者間で誠実に協議してこれを解決する 」 という条項が必ず入っています。原文にそうある以上,The parties will meet and discuss "in good faith" any dispute between them arising out of this Agreement.という英文を挿入することになります。しかし,紛争が発生しないように 「 契約書を作成締結する 」 のですから,この条項を入れること自体ある意味で紛争を誘発しているようなものです。特に,契約の相手が駆け引きを許容する社会に帰属する国民であれば ( 一定のルールに従っていれば公正=Fairであり全く問題がないことになります-野球の盗塁を想像してください ),詳細なルールを規定しておくのが自己防衛的です。ただ,この方法が特定の取引社会に有用かというと,そうではないかもしれないというのが私の個人的見解です。日本人の和や仏教的慈悲の精神というものは相手方の言い分を大幅に認め,譲れるものは譲り,人と協調的な関係を保つことを重視します。そうであれば,金額等の最低限度のことを決めておけば足りるので,契約の締結が迅速化するのです。とはいえ,どちらを選ぶかは企業の法務部門の選択によるので,必要最小限の簡潔なものにして紛争が発生した場合にはその都度誠意をもって協議 ( =meet and discuss ) するか,あるいは過去のトラブル事例を参考にこういう事態が発生すれば,こういう処理をするということを各条に詳細に規定しておくかは草案を提出する側の合理的決定によります。なお,いかなる規定であっても ( 日本人が作ったものであっても英米人が作ったものであっても ),準拠法に従い効力が認められない場合がありますので何でも書いて良いということにはなりません。
チャイナタウン
By Vox Theory (CC)
 最後に,抽象的な言い方かもしれませんが,相手方が何を考えているかは分からないものです。そして,自分が正しいか相手方の言い分が正しいのかも本当のところは分かりません ( 車の右ハンドルと左ハンドルのどちらが当たり前なのかは分からない )。それを裁判で決着させたとしても担当裁判官がそう判断したに過ぎず,別の裁判官が担当すれば結果が異なることもあるのですから,相対的なものです。当事者間,特に国際取引においてミスマッチは避けられない ( 特にどちらに責任があるともいえず,またどちらにも言い分がある場合が多い ) のですから,何が正しいかを争うのではなく,ミスマッチが発生したときにお互いの利益にとって何が最善であるかをあらかじめ自覚するのが賢明です。








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