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ビジネス翻訳における訳語の選択

 いくつもある訳語の選択肢の中から、これはといった一語を選び出すのは翻訳の醍醐味のひとつです。しかしその分たいへん難しい作業でもあり、翻訳者の技量が問われることになります。
 ビジネス翻訳の場合、どのような用語を使うかは産業分野ごとの「業界語」を把握したうえで決める必要がありますし、翻訳の対象となる文章が契約書なのか、社内文書なのか、あるいは広報用のリリース文なのかでも変わってきます。独自の企業文化に左右される場合もあるでしょう。証券会社とソフトウェア開発会社ではまったく違うコーパス ( 言語データベース ) が使われていて、さらに企業によってはオリジナルの用語集を備えているところもあります。つまり、ビジネス翻訳には極めて細かく分類された用語体系が存在することになります。
 また、万人に向けた巨大な言語リソースとでも言うべき存在が辞書です。英和辞典の頁を繰るたびに、たったひとつの英単語がこんなにも多くの日本語に対応しているのかと、あらためて驚かされます。たとえば 「 operation 」 の項を見てみると、機械の 「 運転 」 や事業の 「 運営 」 にはじまり、コンピュータの 「 演算 」、病院での 「 手術 」、市場の 「 操作 」、軍事の 「 作戦 」 にいたるまで、この一語に実に多様な意味が包含されていることがわかります。これら複数の選択肢の中から正しいひとつを選び取るというプロセスが正しく行われなければ、原文と翻訳文の等価性は著しく損なわれてしまいます。
 次に、表記をどうするかという問題があります。同じ 「 営業活動を行うこと 」 という意味でも、 「 運営 」 と書くのか 「 オペレーション 」 と書くのかによって文章の性質は少なからず変わってきます。ひらがなでも漢字でも、あるいはカタカナで書かれてあろうと、意味が正しく伝わればいいじゃないか、という意見もあるかもしれません。たしかに単に意味を伝えることを目的とした文章であれば、表記にまでこだわる必要はないでしょう。内容が理解できればいいのですから。しかし、ときとして文章は ( 特にそれが社外の人の目に触れるものである場合 )、企業のイメージを決定づける 「 顔 」 にもなりうるのだということを忘れてはいけません。プロの翻訳者ならば、ただ漫然と言葉をあてるのではなく、十分な思索を巡らしたうえで唯一無二の訳語を選択してやろう、というくらいの気概が欲しいものです。
 
サボテン
By Randy (CC)
 実際に翻訳作業を行う中では、ときとして辞書にない言葉を訳語としてあてなければならない場合もあります。「 言葉は生きものである 」 とはよく言われることですが、たしかに一義的な記号の置き換えにとどまらない翻訳の不思議といったようなものを、私自身、幾度となく経験してきました。機械翻訳のシステムがなかなか確立しないのも、どうやらこのへんに原因があるようです。もちろん、数式で解けない部分があるからこそ言葉の仕事は魅力的だ、とも言えるのですが・・・・・・。この、一筋縄ではいかない、しかし一種パズル遊びにも似た面白みのある訳語の選択という作業に、翻訳者はときに悪戦苦闘しつつ、ときにニヤニヤ笑みを浮かべつつ取り組んでいるのだということを、この拙文を通して知っていただければ幸いです。


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