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フランスの文化・社会――フランスの森

小道
By Andre Mouraux (CC)


フランス語翻訳を行うにあたって、事前によく理解しておくべきフランスの文化・社会にかんする情報はたくさんあります。
それにあたっては意外な盲点から入っていくというやり方もあります。

われわれがフランスを理解しようとするときに意外と見逃しがちなのが森のことです。

それは日本での森林というものが材木の供給源であって、文化的に扱う対象ではないからでしょう。われわれ日本人にとっては、(特に山間地の)森というと木々が密集していて、下草もびっしり生えており、しかも中には虫等がたくさんいるので、入り込んでもまず快適な体験など望めない場所を想定します。ところがフランスではそうでもなさそうで、けっこう人が入ったりしていることは皆様も童話等でご存じのことを思います。

フランスはわが国に比べて、年間の降水量が少ないので概して木と木のあいだに適当な間隔があり、また下草も丈が低く、その上をあまり問題なく歩けるのが普通です。

森は中世には王様や貴族にとっては狩りによって食肉を調達する重要な場所でした。
現在でも狩猟は行われていますが、これは厳重な管理の下におかれていて、秋の一定期間に猟をするのが普通です。これでとった獲物はジビエと呼ばれて、都会の肉屋にぶら下げられる他、森の近くのジビエ専門のレストランで供されものもあります。

森はこうした用途の他に、一般のお百姓たちにとっては、非常に重要な生活物資であった薪の供給源となりました。森のはずれに村落を構えると、薪の取得が簡単で、しかも森の外に拡がる田園地帯で小麦などの栽培ができるので、生活上便利であり、大きな森の周囲には縁にそって村々が点々とありました。

フランスとフランス語を理解するにあたって、意外な盲点は英国からの影響です。
18世紀からは、英国の影響もあって、森を審美的な存在として眺めることがはじまりました。森の中を意味もなくぶらぶらと散歩したり、その空気を吸って喜んだりということが行われるようになったのです。

パリの近郊には美しい森がたくさんありまして、北のシャンティー周辺、コンピエーニュの森等がありますが、いちばん人気があったのは、フォンテーヌブローの森です。ここは森の中心にフランソワ一世が立てたお城もあり、ここには16世紀にはイタリアから派遣された画家たちが集まったりした文化的な土地でもありますが、森の中には池あり、奇岩有り、奇木あり、というように森ばかりでなく変わった風景もあってそういう点を楽しむこともできたのです。
ここは西のハズレに有名なバルビゾンの村があることがよく知られています。また、南の端には黒田清輝や浅井忠が長期間滞在したことで知られるグレー=シュル=ロワンの村もあります。

ここはパリからの交通はけっして便利ではありませんでしたが、たとえばフロベールの『感情教育』の主人公と女主人公がここでデートをしたりしていますから、この森は格好のデートコースでもあったようです。またこの森に限ったガイドブックまで発行されて、森内部のめずらしい景勝地の紹介をしたほどでした。

また、19世紀の前半にはフランスの画家の卵たちにとって最高の栄誉であるローマ賞の試験科目に樹木のデッサンがあったので、そのためにこの森に夥しい画家の卵たちが集まったのです。
当時のリトグラフィーを見ますと、数十名の画学生が森の中で同じような帽子をかぶり、同じようにイーゼルを立て、座り込んでデッサンに熱中している姿が描かれています。当時の人々もこの森の繁盛ぶりに驚いている風情です。

このような森の人気ぶりに、フランス文化の特質を見るべきところでしょう。


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フランス語一口メモ 日帰りでいくフランスの土地――バルビゾン

ご承知の通り、フォンテーヌブローの森のはずれにある村の一つがバルビゾンです。

ここは有名なバルビゾン派の揺籃の地として有名すぎるくらいに有名になりまして、いまでは例によって、超高級ホテルまであるほどですが、バルビゾンのような森周辺の村というのは他にもシャイイとかいくつもありまして、とくにバルビゾンが傑出したものはなにもなかったのです。にもかかわらず画家たち、画家の卵たちがバルビゾンにあつまったのはここにガンヌ親爺というひとが経営する宿屋ができて、ここで安価に画家たちを泊めたからでしょう。

この宿屋は画家たちに寛容で、しかも昼間、森に入って写生をする画家たちの弁当までつくってくれたというのですから、人気のでないはずがありません。もっともここに宿泊したゴンクール兄弟はここをくさしていますが。

ここが気に入った画家たちは次第に村内の家を借りたりして1830年代くらいから、村に定住するようになりました。われわれはバルビゾン派というと、岩波書店のロゴにもなっているミレーを考えますが、ミレーよりももっと深くこの村とこの森に沈潜して樹木の一本一本とつきあったといわれるのは、テオドール・ルソーです。


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