フランス語翻訳するときの問題点 : 専門分野にも強いELSスタッフエッセー ( 日本語 )

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フランス語翻訳の諸問題

サッカー
By James B Brooke (CC)

接続法大過去と条件法過去第2形

フランス語翻訳の問題点としては、もちろん翻訳技術上の個々の問題もありますし、翻訳の世界・業界にまつわる独特の問題もあります。しかし、もっと根本的な問題としてフランス語が理解できなければお話しにならないという意味では、語学力が根本の問題となります。しかし、この語学力の涵養と言うことが実はいちばん難しい問題なのです。

こういうフランス語の翻訳における語学力の問題というのは、個々のテキストの解釈の問題に還元されやすく(このテキストは難しい! いや、易しい!といった判断になります)、一般論としては語りにくいのですが、しかしいくつか文法的な問題に還元できる、つまり一般論に還元できる問題ならば、取り上げることもできるのではないでしょうか。

たとえばフランス語翻訳における接続法大過去と条件法過去第2形の問題があります。これは実は同じ形をしているので、どちらに分類したらよいのか、ちょっと迷うことがあります。また、分類ができたとして、条件法過去と認定したとしても、では条件法過去第1形と全く用法がおなじであるかというとそうでもないのです。

フランス語翻訳で問題になることはまず形を確認できるかどうかです。確認してみますとこの変化形はけっこう複雑な活用をするように見えますが、じつは簡単なのです。というのは、この接続法大過去=条件法過去第2形は話し言葉で使うことはまずなく、もっぱら書き言葉で使用するわけですが、書き言葉の文章の主語は言うまでもなく、第3人称が多いのです。しかも単数のほうが多いのです。ですから極論を言えば、3人称の単数だけ頭に入れておけば、あまり困らないのです。具体的には il eut chante, il fut sorti というように avoir (または etre )のところにアクサン・シルコンフレックスがつくことで見分けがつくのです。

フランス語翻訳の上で接続法の大過去としての用法は、これは主として過去の過去としての用法ですのでこれはあまり難しいことはありません。
Il semblait qu’elle eut ete satisfaite.
条件法過去第2形の用法も、これは条件文の帰結をあらわす文章のなかで使うのですから、あまり問題がありません。
Heureuse, elle eut ete jolie (Victor Hugo) 「幸福に育っていれば、彼女は美しくなっていたことだろう」
このように原則的な用法に関してはあまり問題はありません。

しかしながら接続法大過去=条件法過去第2形だからといって、条件法過去第1形が入るところに接続法大過去がいつも入れるかというと、そうではありません。

たとえば、接続法大過去は「過去の過去」を表すときに用いられ、条件法過去第1形が行っているような現在完了、未来完了の意味の時は使用できないのです。
Si j’avais ete la, il ne serait pas venu.
こうした表現の場合には、条件法過去第2形は使えないのです。

またこれとは逆に接続法大過去は使用してよいが、条件法過去第1形は使用できない例もあります。

その代表的な例としては、非現実の過去の仮定の場合で、たとえば comme si あるいは que si のあとにくる動詞の場合です。この場合は、接続法大過去、あるいは直説法大過去は許されるのですが、条件法過去第1形は来ないのです。
Ils discutaient comme si la vieille femme n’ eut pas ete presente. (Mauriac)

(ou ) ~ ~, comme si la vieille femme n’avait pas ete presente.
このように接続法大過去と条件法過去第2形は同じものとはいってもじつはちょっと厄介な関係があるので、注意が必要です。フランス語翻訳の上で以上のような点への注意が必要です。


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日帰りでいくパリ近郊の旅
アルジャントゥイユ

印象派はパリ近郊のセーヌ河沿いに展開して水辺の風景をもっぱら描いたことはよく知られています。画家たちはセーヌばかりでなくパリ近郊にあって、セーヌの支流をなすオワーズ川やロワン川などにひろく展開しましたが、しかし何と言っても中心といってよいのは、セーヌが沿いでパリの下流にあり、モネが長く住んだアルジャントゥイユの辺りと言って良いかと思います。ここは近くに同じく画家がたくさんあつまったブジヴァルもありますし、一般の避暑客が集まりすぎて風紀が乱れるに至ったラ・グルヌイエールもこの近くです。
モネがアルジャントゥイユに住んだのは、このあたりがセーヌ沿いの避暑地の中心であって素晴らしい眺めに事欠かなかったためでしょう。
しかしこのあたりはすでにモネが住んでいた頃からやや人気がありすぎて、また工業化も始まっていました。その後、モネはだんだんとセーヌを下って、故郷のルアーヴルに近づき始め、最後にはジヴェルニーに定住します。
現在のアルジャントゥイユは工業化も進み、往事の面影を十分に忍ぶことができませんが、然るべき目をもってじっと眺めてみると印象派の画家たちの感じていたこと、考えていたことが見えるかのようです。


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