「 過去形はどう訳す 」 フランス語翻訳専門会社スタッフのエッセー ( 日本語 )

トップページ | フランス語圏の情報 | フランス語翻訳に関するエッセイ | 直前のページに戻る

過去形をどう訳すか

恋人たち
By Dmitry Klimenko (CC)


フランス語翻訳で問題になるのは過去形をどう訳すか、という問題です。ご存じの通り、フランス語には過去時制がいくつもあるので、まずそうしたさまざまな過去時制の違いを理解することも大変ですし、その違いをうまく訳し出すことはもっと大変です。

普通まず、フランス語の複合過去と単純過去は動作を、そして半過去は習慣的行為、状態を、そして大過去は過去の過去を表すと習います。そのために、複合過去、単純過去は「~した」と訳し、半過去は「~していた」と訳す方がいらっしゃいますが、機械的にこうした訳をすると、かなり滑稽なことになってしまいます。

また、複合過去は日常会話、手紙、日記等で用いる、そして単純過去は歴史、新聞等という風に説明して、時制としての働きは同じように説明している本もありますが、実際には異なるのです。ひとつのテクストの中に、複合過去と単純過去が共存することは非常によくあることです。つまり両者は言わんとすることが異なるのです。

また、フランス語では過去のことを述べるに当たって歴史的現在を用いることがありますが、これをそのまま現在形のように訳すのかという問題もあります。逆にフランス語では過去形で書いてあるけれど、日本語でそれを(歴史的現在として)現在形で訳してはいけないのか、という問題もありそうです。

フランス語の翻訳という観点から、結論を先に言ってしまうならば、あまり文法書の言うことに従わないで、コンテクストと翻訳者の語感を信じた方がよい、ということになります。動詞の過去時制に関してなにか勘違いをしていないことが前提ですが。
言いかえると、まあ、フランス語の過去表現を日本語の過去表現に移すときの一般法則を提示するのは難しいのです。

まず、複合過去と単純過去の区別ですが、単純過去とは過去の事実を客観的に語っているだけでして、語っている語り手とか、語っている語り手がいる現在時制の世界とは切り離されている世界です(これを研究者によっては、recit と呼びます)。

これに対して、複合過去はつねに語り手のいる現在の世界と切り離せないのです(これを研究者によっては、discours と呼びます)。その証拠に複合過去(英語でいえば現在完了)は、avoir またはetre の現在形のあとに過去分詞を付けるのでしたね。ですから、小説などのなかで、複合過去がでてくるのは、多くの場合、読者に話しかけているような感じ、はっきりと読者をvous と読んだりはしていないが、心理的にそういうニュアンスがあることがあるのです。まあ、こういうニュアンスがうまく訳出できるかどうかはシチュエーション次第ですが。つまり、現在形―複合過去―半過去、という一つのグループがあるのです(現在形が中心)、単純過去を用いる場合は、単純過去―半過去―大過去(単純過去が中心)という組み合わせで一セットを作ることになります。

もうひとつ、フランス語翻訳で、こうした時制の訳でいえることは、「半過去はわりあいと現在形で訳せる場合がある」ということです。これはちょっと誤解をまねきそうな言い方ではありますが、半過去は過去形ではあるけれども、一般的な事実、一般的な真実を述べることがあります。こういう場合はもちろん(一般的な事実、真実ですから)現在の事実、真実のように表現してもよいわけです。

もうひとつ、半過去は過去のことをあたかも現在のように描き出すという性質があります。たとえば、絵画的な半過去とかよばれるものなどは翻訳では、今、現に目の前にあるかのように描写するわけです。そうすると、現在形となじみがよいことになります。


Excom-System Language Services
エクスコムシステム ランゲージ サービス(ELS)

フランス語翻訳、校正などの代表者連絡先 : honyaku@excom-system.com

提携先:Aaron Language Services
San Francisco, California
サンフランシスコ市発行 営業ライセンス番号:388028 001 07

( お支払いは日本国内の銀行口座 を御利用いただけます。)

各種言語翻訳 ( 和仏翻訳、仏和翻訳、仏英翻訳、英仏翻訳、多言語翻訳 )、仏文校正 ( 仏文添削 編集 リライト 校閲 ネイティブチェック プルーフリーディング )、ウェブデザイン、ネットスクールの英文ライティング指導 (自由英作文トレーニング 文章作成 書き方 指導 和英翻訳講座 添削のオンライン通信講座、英文添削講座、英語構文対策講座、ビジネス英作文講座、英語通信講座、英語学習 ) 等の総合サービス。

仏語 ( 和仏翻訳と仏和翻訳の双方向翻訳 ) の他にも、英語をはじめ、ドイツ語、イタリア語、ロシア語、スペイン語、ポルトガル語、オランダ語、ギリシャ語、スウェーデン語、ノルウェー語、デンマーク語、フィンランド語など多数の言語の翻訳と校正に対応。

ELS では論文翻訳をサポートいたします。各種論文のグローバル発信の重要性が求められる現状では、いかに優れた論文でも、翻訳する場合は当然、翻訳者の専門知識、技量が必須です。理系・文系を問わず各分野の日本語論文のフランス語翻訳はELSにお任せください。ご希望に沿ったフランス語論文に仕上げます。フランス語論文の書き方についても経験豊かな専門家が対応いたします。

翻訳品質、顧客対応共にベストな翻訳サービスを提供いたします。



フランス語一口メモ ノルマンディーの避暑地――カブール

ノルマンディーの海辺の避暑地というと、ディエップ、トゥルヴィル、そしてドーヴィルが有名ですが、それ以外の海岸地帯には無数といってもよいほどのリゾートが存在します。そうした小さめのリゾートには、大避暑地が豪華で、高級なのに対して、もうちょっと庶民的にしている方が普通なのですが、逆のケースもあります。

カブールはトゥルヴィル、ディエップなどが人気が出すぎて人が多すぎるのを嫌って、もっと少数の人たちが穏やかに過ごせるように作った街でして、徹底的に計画的に作られました。よい砂のある浜辺に面した場所に大ホテルを建てます。このホテルはすぐ隣がカジノであり、陸地側には広場をつくりそこから放射状に多くの道路を延ばします。その道路沿いにヴィラをたくさん建てたのです。つまり、この街の中心はその名もグランド・ホテルという大豪華ホテルでして、それにプラス個人のヴィラがたくさんあるだけ、その他のホテルもほとんどなく、つまり豪華ホテルの客とヴィラの所有者だけの街ということになります(実際には観光客も入り込んできますが)。

ここの浜辺からみる夏の夕日は本当に輝かしいもので、ノルマンディーの夏の海の魅力を堪能することができます。

ここは1907年から14年までプルーストが毎年滞在して、『失われた時を求めて』を執筆したことで有名になりました。現在は浜辺にそったこぎれいな散歩道は Promenade Marcel Proust と呼ばれています。


エクスコムシステム ランゲージ サービス(ELS) Copyright 2014無断転載禁止。