フランス語 ・ 英語 ・ 日本語 ・ 多言語の翻訳会社スタッフエッセー : 固有名詞表記

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フランス語翻訳の問題点――固有名詞の表記について

凱旋門
By Kieran Lynam (CC)


フランス語翻訳の場合、個人の名前、土地や店の名前を日本語でどう表記するかは非常に重大な問題です。

発音を、それに近いカタカナ表記で日本語に移せばよいと思われるかもしれませんが、実はそれがけっこう難しいのです。該当する母音がないので、「ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い」(これはドイツ語ですが)のように、どうあがいても正確な発音表記ができない場合もあります。この音、たとえばEure (川)は「ウール」なのか「ユール」なのかという問題です。これにははっきり言って定説はありません。

また、明治以来の翻訳の歴史のなかで原語の発音に接することが少ない状況で訳したために、推測でカタカナの音をつけたようなケースもあります。たとえば、ノルマンディーにCaenという歴史の古い町がありますが、これは実際の発音は「カン」または「コン」であって、「カーン」と言ってもフランス人にはまったくわかりません。

だから、これはむしろ「カン」と書くことが推奨されるのですが、しかし、これまでずっと「カーン」と書かせてきた習慣の力があるので、にわかに「カン」に変更してよいか、やや躊躇するところです。しかし、ノルマンディーのことが話題になっているコンテクストで「カン」と書けば、読者はまずわかるでしょうね。

同じく、ノルマンディーのRouen を「ルーアン」と発音してもフランス人には通じません。これは、実は「ルアン」とr の音を響かせながら発音しないと、フランス人には通じません。

フランス語翻訳で問題になるのは、他にもあります。これと似たような例で「ボードレール」「フローベール」はむしろ「ボドレール」「フロベール」のほうが実際に近いと思われますが、ま、これはどちらを書いてもあまり影響はないと思われます。

フランス語翻訳で問題になるのは、現地の正確な発音が日本での慣用とあまりにも異なっている場合です。たとえば、映画祭で有名なCannesは、実際の発音は「キャーヌ」としたほうが実際に近いのです。しかし「キャーヌ」と書いたら、これが「カンヌ」のことだとはたいていの日本人はわからないでしょう。ですから、こうしたケースは読者の理解のことを念頭に置いて、「正確な発音」と「日本語表記の慣用」とのあいだでバランスをとる、としか言いようがありません。

また、現在は現地国の読み方を採用するのが原則ですから、Venise はたとえフランス語のテクストのなかに登場してきても、「ベニス」ではなく、まして「ヴニーズ」とフランス風に読ませるでもなく「ヴェネツィア」とイタリア式に書くべきです。それに、これでわかりますし。

さらにフランス語翻訳で問題になることがあります。あるレストランやホテルが「意味」のある名刺を組み合わせて固有名詞をつくっている時、どう訳すか、という問題があります。たとえば、Cochon d’or を「金豚亭」と訳すか、音を表現して「コション・ドール」とするか、という問題です。さらに Plat d’etain は「錫の皿」亭なのか、「プラ・デタン」とするのか、という問題です。この場合でもシンプルな一原則でぜんぶのケースをなできりで始末することは難しくて、Cochon d’or では、おそらく「コション・ドール」という音はけっこう日本人のあいだでも慣れている人が多いので、フランス語の音をそのまま表記して構わないのじゃないでしょうか。

しかし、「プラ・デタン」と訳し出すと、この音はあまりにもなじみがなく、何のことかわかりません。ここは「錫の皿」亭のほうが無難のように思います。La Revue des deux mondes なども、意味を取って『両世界評論』という訳がほぼ定着していると思います。


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フランス語一口メモ ジヴェルニーーーパリからの日帰りの旅

モネの庭、ジヴェルニーはあまりにも有名なので、ここで改めて紹介することもないほどです。セーヌに注ぐエプト川の支流にそった小さな庭が、世界でもっとも人気のある庭園として、世界中から観光客を集めていることは、たいへん興味深い現象ですね。モネのつくったこの庭にさまざまな花が咲き乱れ、季節によっては今日も睡蓮が池に咲き、といったようなことはすでにご存じかと思います。個人の庭にふさわしいようなこじんまりとした自然庭園ですが、基本的には英国風のものです。モネは若いときからロンドンにでかけるなど、イタリア、ローマの方へはまったく行かずに、英国の影響を受けて、自己形成をはかりました。

池には日本式の橋も架かっていて、また室内には当時パリで流行した浮世絵がたくさん掛けてありまして、日本の影響も大いに感じられます。しかし、英国風庭園というのは、じつは庭の中に中国風の東屋を置いたりすることがふつうであったので、そういう流れ(エキゾティシズム)で日本の橋をおいた、ということも考えられます。

また家の中の台所兼食堂は一面を黄色く塗ってあるのでモダンな印象がありますが、あれはノルマンディーなど田舎のある程度裕福な農家の台所のつくりそのままです。たとえば、画家のミレーはコタンタン地方の奥の方、グレヴィルの村の出身ですが、彼の実家の台所と、モネの台所はそっくりなのです。黄色くは塗っていませんが。


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