翻訳専門会社 ( フランス語 ・ 英語 ・ 日本語 ) のスタッフエッセー : 厄介な半過去

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ちょっと厄介な半過去

砂漠
By Patrick Gruban (CC)


フランス語の翻訳を考えるときに厄介な思いをするケースとして、過去形があります。過去を表す時制が無数にあり、最初にフランス語を勉強するときにこれにぶつかると面倒な思いをだれでもするのではないでしょうか。

いちばん簡単な例を挙げてみれば、
Lorsqu’il est arrive a la gare, le train etait parti.
「彼が駅に着いたら、もう列車はでてしまっていた」乗り遅れたわけです。これは複合過去と大過去のもっとも基本的な用例を示しているわけで、非常に明瞭な、誤解の余地のない例だと思います。
それでは、以下のような例ではどうでしょうか。
Lorsqu’il est arrive a la gare, le train partait.
彼は列車に乗れたのでしょうか? あるいは乗れなかったのでしょうか? 

半過去は、普通「状態、習慣、反復された行為」等を表す、また「同時性」を表すことになっています。しかし、そうした説明だけでは、厳密に言ってこの文の半過去の用法を理解できません。半過去は過去における「未完了」を表す、ひいては過去のある特定の一時点ではなく、特定の一時点の前後を表す、ということを理解しておく必要があります。

ですから、この場合には、「彼が駅に着いたとき、列車は出発しかけていた」のでして、彼は飛び乗ることが出来たのです。つまりこの時の le train partait はle train allait partir を意味することになります。ちなみに、過去における近接未来を表すaller は半過去で表さねばならないことも併せて、申し述べておきます。

これと関連して書いておけば、主節、従属節共に半過去の時は
Lorsqu’il arrivait a la gare, le train partait.
「駅に着くといつも列車が出発しかけていた」のです。いつも列車に飛び乗ることを続けていたんでしょうね。また、半過去と大過去の繰り返しになりますと、
Lorsqu’il arrivait a la gare, le train etait parti.
となりますと、「駅に着いた時には汽車が出ているのが常だった」のでして、毎回乗り遅れていたんでしょうね。

フランス語の翻訳を考えるとき、半過去に関しては過去の特定の時点を起点にその前後も半過去は表すので、やや前に、やや後に時制がずれることがあると申しましたが、もうひとつちょっと厄介な半過去があります。

これは本来ならば、別の時制ですませるはずのところなのに、あえて半過去を使うのです。 これは、さも起こっていることがからを目の前に見えるかのように描写するときに用いる物でして、これを「絵画的半過去」と呼ぶことがあります。
≪ J’ai soif ≫ disait-il.
これは本来ならば、dit-il というように単純過去になるべきところなのですが、あえてその生き生きとした現在性を示すために半過去にしているのです。

半過去はもともと時制の一致で、「過去における現在」を示すために使われることがありました。つまり、過去のなかに自己を投入して、その過去を現在のように生きる、という性格があるのです。そういう性格を理解しておけば、絵画的半過去の用法も理解しやすいのではないでしょうか。

しかし、フランス語の翻訳の方法として、どのように訳せばよいのか、という問題は残りますね。
もういちど確認しますが、何度も言っていたとか絶えず言っていた、というのではないのです。


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フランス語一口メモ パリ、ところどころ、黒人街

ご承知の通り、現在のパリは移民がすごく多く、パリの北の方へ行くメトロ4番線その他は、夕刻時になると白人の乗客の方が少なくなります。しかしそうはいっても、パリの北でも、地区によって、極端に言うとメトロで一駅違うだけで、人種構成がだいぶ異なる場合もあります。

わかりやすい例をあげると、モンマルトルは天辺周辺の観光地区は別として北側(裏側)も含めてかなりな高級住宅街ですが、裏の北側にある程度下ったあたりから、様相が一変します。もう黒人しかいなくなるのです。そうしてメトロの・シャトー・ルージュを中心とした界隈にはアフリカンを対象にした食材店、レストランばかりになってしまいまして、もうまったくパリではありません。

また、このメトロ駅のすぐ近くのrue Poulet という通りにはもっぱらアフリカン相手の美容院が何十となく並んでいまして、外から見るだけでも壮観です。普通、美容院というのはパリでも日本でも客用の椅子と椅子のあいだが、まあ2メートルは離れているものだと思いますが、ここの美容院はどこも1メートルくらいしか間隔がなく、客も美容師もひしめくようにして髪を切ったり編んだりしています。黒人女性たちへのお洒落への情熱の凄さに圧倒される思いです。


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