翻訳専門会社 ( フランス語 ・ 英語 ・ 日本語 ) のスタッフエッセー : 翻訳テクニック

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フランス語翻訳のテクニック
取った方がよいものもある

踊り
By Ben Ostrowsky (CC)


フランス語の翻訳を考えるとき、日本語とはなにかと構造が異なりますから、直訳してもダメな場合が多々あることは当然です。場合によって訳し出さないほうが好ましい結果を生むケースさえあります。

フランス語は人称代名詞が発達していて、これを欠いてはテキストの正確な理解もおぼつきませんが、しかし和訳では主語人称代名詞はできれば無視した方がよいのです。というのは、日本語は主語がおそらく不要な言葉でして、なくても主語が誰なのかだいたいわかってしまうのです。あるいは誰なのかわかるように書くのが日本語なのです。人称代名詞を律儀に訳しだしていると、たとえば「彼は、彼のクルマを、彼女に貸した」というような文章になってしまうことは必定です。それに現代の日本語で「彼、彼女」というのは代名詞ではなくて「恋人」という意味です。もちろん、テキストから「彼」「彼女」を完全に追放せよといっているのではなく、必要ならば使ってくださって構わないのですが、しかしかなりのケースで不要である、あるいは使いすぎるとうるさい、ということを確認したいと思います。

1人称と2人称との対話の場合なども、問題なく主語代名詞を省略することが出来ます。というのは、日本語には敬語・謙譲語があるからです。つまり日常の会話を考えてみればおわかりの通り、普通「あなたは明日来ますか」とは言わないのでありまして、「明日いらっしゃいますか」と言うのだと思います。敬語の中に「主語は相手」という意味がすでに入っているわけです。それに自分のことでは、「わたしは明日行きます」とは決して言わず、「明日参ります」というのだと思います。つまりフランス語では主語のje やvous が果たしている役割を日本語では敬語、謙譲語が果たしていることになります。

敬語、謙譲語は3人称の誰のことを言っているか示すことも出来ます。「昨日いらしたときに申し上げておきました」と書けば、誰のことに言及しているかコンテクストによってわかるはずです。

また、直訳しないで、むしろ単純化して訳した方がよい場合もあります。たとえば主人公が宝石店に入っていて、ポケットから出した真珠の首飾りの値踏みを依頼するとします。
Monsieur, je voudrais bien savoir ce que vous estimez ce morceau.(Maupassant)
直訳すれば、「この品物の評価額を知りたいが」くらいの訳になると思いますが、しかし実際の場面ではそうは言わないと思います。むしろ「いくらぐらいになりますかね」というのではないでしょうか。そうだとすると、そのように端折った、単純な言い方の方がリアルである、ということになると思います。

言葉の意味を決めるのは辞書ではなく、コンテクストである、というのはごくごく平凡な真実ですが、その場合にコンテクストというのは、単にテクスト上のコンテクストばかりではなく、文化全体のコンテクストも参加しているように思われます。ですから、仏文和訳においても、おそらく日本語の能力がかなり要求されている、というのが真実なのでしょう。


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フランス語一口メモ パリ、ところどころーーパサージュ・ジュフロワ

 一時期話題になったフランス・パリのパサージュというのは、屋根付きの小路のことでして、日本風にいえばアーケードと言った方がよいかもしれません。大通りが騒音とゴミ、危険性などであまり快適な場所でなくなったので、大通りと大通りの間の抜け道としてつくったのです。パサージュは雨、泥、馬車からも守られていたばかりでなく、両側にお店が並んでいて、そうした店の商品を冷やかしながらぶらぶらと歩くことが出来たので、極めて消費的、かつ快適な場所となりました。

 現在ではさまざまなパサージュが改修を受けて昔の快適さを取り戻しつつありますが、このパサージュ・ジュフロワは両側に無数の土産物屋、小物屋、小レストラン、カフェ、古本屋、ホテルなどが並んでいて、ゆっくり冷やかすのにはとても楽しいところです。ブタの小物専門のみやげものの店もありますし。大通りからパサージュ・ジュフロワにはいる角にあるミュゼ・グレバンも一度は訪れてみたいたのしい芝居小屋です。


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