翻訳専門会社 ( フランス語 ・ 英語 ・ 日本語 ) のスタッフエッセー : 直接 ・ 間接話法

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直接話法と間接話法

彫像
By Ms. Anthea (CC)


フランス語の翻訳教室で以下のようなテキストを出すとします。
--- J’ai tres froid, dit-il, j’ai du attraper une mauvaise grippe.
すると以下のような訳が帰ってくることがあるんですね。「寒気がする。と彼は言った。悪い風邪をひいたに違いない」フランス語は直接話法で引用した文のど真ん中に、地の文(この場合はdit-il)が入ることがあるってことに気がついて下さらないのですね。引用文の中に入った地の文は倒置されることによって、その存在を明確にアッピールしているのですが。じゃあ、どうすればよいか。カギ括弧をいったん閉じて、地の文を示した後、もう一度引用文をカギ括弧であける、ということも考えられます。そうすると、こうなります。

① 「寒気がする」と彼は言った。「悪い風邪をひいたに違いない」
開けたり閉めたりするので、ちょっとうるさい感じがしますね。
それなら、二組の引用文をまとめてしまうことはすぐ思いつくはずです。

「寒気がする。悪い風邪をひいたに違いない」と彼は言った。
昔、日本で出版されたフランスの小説などを見ていると、こういうところをいろいろなやり方で訳していることがわかります。実際に①のように訳している例もあります。また、

② 「寒気がする――と彼は言った。――悪い風邪をひいたに違いない」
というようにハイフンで地の文を区別しているケースもありました。

①も②も最近は見ないのは、翻訳の技術が全体として上がっているせいでしょうか。
これを間接話法にしたらどうなるでしょうか。たぶん、こんな感じになるのでしょう。
Il dit qu’ayant tres froid, il avait du attrapper une mauvaise grippe.
日本語に翻訳すると、「寒気がするのでどうも風邪を引いたに違いない、と彼は言った」となります。主語をとってしまうわけです。どうして取るかというと、日本語にはあまり主語はいらないという原則論をふりまわさなくても、ここで「彼は寒気がするので、彼は~」という言い方はどう考えてもおかしいからでしょう。「自分は寒気がするので」なら通ります。「日本語には間接話法はない」と言われるのを聞いたことがありますが、そうした原則をわれわれは無意識的に適用して翻訳しているのではないでしょうか。このケースは「無意識的な操作でなんとかやっているわけですが、こういう原則を頭に入れないで、フランス語文献の間接話法をむりやりにでも間接話法的に和訳するとおかしなコトになるでしょう。
Il a dit qu’il reviendrait le lendemain.
これを「彼は翌日戻ってくるだろうと、彼は、、、」とするよりは、やはり「明日ぼくは帰ってくる」とする方がどう考えても自然です。
場所についても直接話法で ici だったところが間接話法では la になるわけですが、これも日本語では、「ここで」と直接話法的にやったほうがうまくいくことはたやすく想像できます。

ですから、翻訳においてはあまり力業をもちいてでも原文に忠実に訳そうとしないでも、常に日本語ではふつうどういうか、ということを考えながら訳すことが鍵になるのではないでしょうか。
フランス語の3人称の主語代名詞などもあまり訳し出さない方がかえってよい結果を生むことは経験上よくおわかりのことだと思います。


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フランス語一口メモ パリ、ところどころ Parc Monceau

モンソー公園は8区にあります。8区のあたりというのは、そう歴史もないところで18世紀には貴族の庭園などがありましたが、19世紀なると高級官僚などをやっている人たちのための広壮なアパートが建ったりして、高級住宅地になりました。モンソー公園はそうした地区のど真ん中にあり、いまでもお金のありそうなおじいさんや、若い子連れのママさんの散歩コースといったイメージです。また入門のフランス語教科書に紹介されることもあって一応はよく知られた存在です。ここで面白いのはさまざまな時代、さまざまな世界の地域の遺跡がここに作られていることです。しかもそのかなり特異な遺跡の中には、人工的に作ったもの(つまり偽物)さえあるのです。考えてみるとこれはけっこうグロテスクな話です。これは18世紀に英国で自然式庭園が流行しましたが、そうした庭園のなかに中国式の東屋やゴシックの廃墟をおくことを喜んだりした風儀の発展したものなのです。18世紀のオルレアン公というひとの庭園だったところに、カルモンテルという画家がつくった廃墟群です。


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