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スペインのフィエスタ(6)―クリスマス


キリスト誕生
By Yoshico Tani

スペイン(Espana)のクリスマス(Navidad)

さて、最後にスペインのクリスマス(Navidad)について簡単に説明しましょう。スペインはご存知の通りカトリック教の国。日本ではあまり馴染みがないカトリック教の古い伝統・習慣がスペインのクリスマスにはあります。

スペインでは10月も終わりに近づく頃、スーパーマーケット等でクリスマス菓子を見かけるようになり、クリスマスの宝くじ(loteria)も広く出回り始めます。こうして徐々にクリスマスムードが高まっていきます。

クリスマスが近くなると、子供たちはタンバリンやサンボンバ(zambomba――太鼓の中央に長いスティック突き刺したような楽器。棒を手でこすって音を出す)や、アニス酒の空瓶(細かい凹凸がある)をスプーンで鳴らし、スペインのクリスマスソング(villancico)を歌い、近所の人たちにお菓子や小銭をもらって回ります。これは「pedir el aguinaldo」といい、最近では廃れつつあるもののスペインで古くからある習慣です。

さて、クリスマスの装飾はなんと言ってもキリスト降誕シーンを人形で再現した飾りBelen(またはnacimiento)(写真)。赤子のイエスを母マリアと父ヨセフが見守るシンプルな情景から、本物の水が流れる小川や樹木もあるキリスト誕生にまつわる全エピソードを描くジオラマまであります。一般家庭でもかなり凝ったベレンが飾られます。が、広場などに大掛かりなベレンを飾る会場が設けられることもあり、子供から大人までベレンを見ようと列をなします(このような大きなベレンには常に遊び心が隠されているので注目)。80年代頃からはクリスマスツリー(arbol de Navidad)が飾られるようになったとはいえ、キリスト降誕シーンの飾りはスペインのクリスマスに欠かせません。ところでBelenとは、イエス・キリストが生まれたといわれる町「ベツレヘム」を意味します。また街中を彩るイルミネーションも美しいです。

スペインならではのクリスマス菓子もあります。アーモンドを使った菓子が多く、ポルボロン(polvoron)、マンテカド(mantecado)、ロスコ(rosco)は焼き菓子、トゥロン(turron)というヌガーもアーモンドとハチミツが主な材料。トゥロン・デ・アリカンテ(turron de Alicante)は粒状アーモンドがはいった硬いタイプのトゥロン、一方トォロン・デ・ヒホナ(turron de Jijona)は、すりつぶしたアーモンドを使ったしっとりしたソフトタイプ。トゥロンには、この他チョコレートやカスタードクリーム風(yema「卵の黄身」の意)等バラエティに富んでいます。さらにマジパン細工、パイ菓子(hojaldrina)、そしてナツメヤシの実(datil)やイチジク(higo)をはじめとするドライフルーツとその加工菓子……ほとんどのクリスマス菓子はとても甘いので、虫歯とカロリーが気になりますが。

クリスマス目前の12月22日は、クリスマス特別宝くじ大抽選会(Sorteo Extraordinario de Navidad)の日です。朝からスペイン中どこでも宝くじの話題で持ちきり。抽選会場で子供たちが次々と読み上げる当選番号。今はインターネットのお陰で様変わりしていますが、少し前まではこの日の午前中はどこへ行ってもラジオから抽選の実況中継が流れ、皆、何となくソワソワしていたものです。1等「大当たり」はpremio gordoといいます。この日のニュースはもちろんこの1等の当選で歓喜するする人々の様子。それを尻目に、「次回こそ!」と1月6日に行われるクリスマス最後の特別宝くじ(loteria del Nino)抽選へと早くも希望を新たにする人も。「Si me tocara la Loteria…(もし宝くじが当たったら)」と思いつつ……(ちなみに当選確率のとても低い大当たりを夢見ているため、動詞は仮定法過去形)

クリスマスイブ(Nochebuena) 12月24日夜9時を過ぎると、通りを行く人影も車もほとんど消え、町は静寂に包まれます。賑やかなのは晩餐のテーブル。スペインでは、家族が一堂に会し家でディナーを楽しむのが一般的なイブの過ごし方。さすがにこの日は家族が最優先で、スペイン人の「家族の絆」が強いことを改めて知らされます。夜9時、スペイン国王によるクリスマスの祝辞がTVで放送されます。さてディナーですが、メインディッシュは小豚の丸焼き、ラム肉、鯛、七面鳥など……地方によって伝統料理があります。前菜でポピュラーなのは車海老等のシーフード、そしてスペイン名物の生ハムや腸詰類。家族でテーブルを囲み、スペイン産ワインを飲みながら一年で最も贅沢なディナーを楽しみます。また食後のデザートに続き、アニス酒、クリームシェリーなど甘いリキュールや発砲ワイン、カバ(cava――スペインのシャンパン)のグラスを片手におしゃべりが続きます。とはいえ、イエス(Jesus)誕生がするこの夜、ディナーを楽しむだけではありません。敬虔なキリスト教徒は夜中12時から行われる聖夜のミサに足を運び、救世主の誕生を祝います。Misa de Galloといわれるこの礼拝、その名の由来はキリスト誕生後最初にイエスを訪れ、皆に降誕を告げたのが雄鶏(gallo)だったという説、また古くは雄鶏が夜中12時を告げ、その鳴き声の後にミサが行われるためなど、諸説あります。

クリスマスの日(Dia de Navidad)。12月25日の朝、サンタクロース(Papa Noel)が持ってきたプレゼントに目を輝かせる子供たち、その一方、明け方までイブを楽しんだ寝不足の大人たち。前夜のディナーがまだ消化し切れていないとはいえ、クリスマスのこの日、キリスト降誕を祝い家族揃ってランチ。結婚している人の多くは、イブは夫の家族、クリスマスは妻の家族、またはその逆、といったように双方の家族と過ごせるよう工夫しています。このように実家を訪れ家族で過ごすところは、どこか日本の正月のようです。

そして大晦日(Nochevieja)。家族とディナー、友達とホームパーティを開いたり……。そして夜中12時。各地の中央広場に人々が集まり、いよいよ新年を迎えます。鐘の音にあわせ12粒のブドウを食べるのがスペイン流の年越し。特にマドリッドのソル広場(Puerta del Sol)は全スペインが注目する年越しの場所。ここの時計台が鳴らす12時の鐘は全国にテレビ中継されるためです。そして12粒のブドウを食べ終えたらカバの栓を抜きFeliz Ano Nuevoと叫んで乾杯!その後Cotillonというパーティやパブ、ディスコで明け方まで飲んだり踊ったりし、にぎやかに行く年に別れを告げ、新しい年を迎えます。

元日は祭日、二日酔いのせいか街はひっそりとしています。そして1月2日からは平常通り。しかしカトリック教国スペインではクリスマスはまだ終わっていません。サンタクロースから期待していたプレゼントがもらえなかった子供にはまだ希望が残されています。1月6日の東方三博士(または賢士)の日(Dia de los Reyes Magos)、公現祭です(祭日)。聖書によると救世主の降誕を知った博士、バルタサール(Baltasar)、ガスパール(Gaspar)、メルチョール(Melchor)がそれぞれベツレヘムに向かい、没薬・乳香・黄金を赤子のイエス・キリストに捧げたのがこの日とされます。それにちなみ、この三博士がプレゼントを届けにくるのがスペイン元来の伝統で、サンタクロースより古くから信じられています。さて1月5日、待ちに待った博士たちがラクダと一緒に町に到着、夕方から夜にかけて通りをパレードをします(Cabalgata de los Reyes Magos)。パレードで博士に会ってお願いをしたらベッドへ。もちろん博士とラクダにお菓子や飲み物(ワインやリキュール)を用意して。でも、安心してはいられません。翌朝起きて見つけるのは、もしかしたらお願いしたプレゼントではなく「炭(carbon)」かも!(砂糖で作った黒い炭を模した塊)。クリスマスのしめくくり1月6日の朝食、もしくは昼食後にはロスコン(Roscon de Reyes)という菓子パンを食べます。ドーナツ型で、上には砂糖漬けのドライフルーツがのり、クリームやカベリョ・デ・アンヘル(cabello de angel 「天使の髪」の意。かぼちゃの一種の中身で作ったジャム)をサンド、中央に王冠が飾られています。さて、これを切り分けて食べるとき、割り当てられたロスコンの中に何か小さなお楽しみsorpresasが隠れているかもしれません。人形が当たったらロスコンの王冠をもらえ、東方三博士のご加護で幸先のいい一年のスタートを切ることになります。でもソラマメだったら大ハズレ。ロスコンをおごらなければなりません。Sorpresaが当たった人も当たらなかった人も、次のクリスマスを楽しみに、良い一年が過ごせますように。


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スペイン語一口メモ INOCENTADA

12月28日はDia de los Santos Inocentes。エイプリルフールのように罪のない嘘で騙したりして笑わせようとする日。

人型に切り抜いた紙を気づかれないようにそっと背中に張ったりするのは古典的(!?)。スペイン人のユーモアやジョークのセンスが発揮される日です。この日ばかりはテレビのニュースや新聞広告にも要注意。この日のジョークを特にinocentadaといい、「Todos gastamos (hicimos) una inocentada al jefe.(皆で上司をひっかけた)」という使い方をします。






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