スペイン3大祭りのひとつに数えられるセビリアの春祭り・フェリア(Feria)。 スペイン(Espana)のフィエスタ(2)
フェリアとは、そもそも中世西ヨーロッパにおける経済発展の結果、それまでの農業中心の地方経済から商業・手工業・金融へと経済活動の枠が広がり行く中、生まれた「市場」を意味します。かつて行われた牛や馬の品評会に代表されるように、各地の特産品が取引された定期市フェリア。今日では、各種産業の国際見本市にもこのフェリアという言葉が使われています。
一方、この昔ながらのフェリアは、時代の流れとともに元来の定期的商取引から、屋台などが出る地方の「祭り」や守護聖人をたたえる宗教的な「祭り」、スペイン各地を巡るとする仮設の「移動遊園地」(通常は郊外に設置)を意味するようにもなりました。したがって、この「祭り」としてのフェリアは、セビリアをはじめとするアンダルシア地方のフェリアだけでなく、スタイルを変えスペイン全国で人々の間で親しまれています。
さて、アンダルシア地方のフェリアは、畜産品評会という本来の目的に守護聖人信仰という宗教的要素が織り込まれ、独自の文化へと発展したものです。
日本で春祭りとして紹介されているセビリアのフェリアは、スペインでは“Feria de Abril”、つまり「4月のフェリア」と呼ばれます。もちろん「春のフェリア」を意味する“Feria de Primavera”もあり、セビリアのフェリア終了直後、プエルト・デ・サンタ・マリア(カディス)でFeria del Vino Finoと併せて開催されます。
セビリアのフェリアFeria de Abrilは、1846年8月カタルーニアのナルシソ・ボナプラタとバスク地方のホセ・マリア・デ・イバラ両氏が、毎年4月19日から21日の3日間セビリアで定期市を開催する許可申請を市役所に提出したことに端を発します。市がこれに興味を示しただけでなく、多くの畜産家や農家の賛同も得られ、翌年、タバコ工場(現セビリア大学)に近いプラド・デ・サン・セバスティアンにて第1回フェリア開催の運びとなりました。
その後、半世紀にわたる変遷を経て、1920年代にはセビリア内外から訪れる人々を応待する仮設小屋(caseta)が、定期市場会場に並ぶようになりました。フェリア開催中だけに出現する「つかの間の町」。ここには定期市に訪れる商人だけでなく、好奇心あふれる人やお祭り好きが集まり、また各界の有名人やアーチストでにぎわうようになりました。このころからフェリアは現在のスタイルを呈してきます。
1949年以降、会場に入場門の設置が義務付けられ、この巨大な正面メインゲートは特に重要視されるようになります。なお、1973年まで市内を会場が転々としたものの、やっとその落ち着き先がレメディオ地区(Barrio de los Remedios)に決まり、現在に至っています。そして、今では仮設小屋の数は1千軒以上に及びます。
さて、ここでアンダルシアのフェリアに欠かせないものを紹介しましょう。
- Portada フェリア会場へ通じる入場門。特にメインゲートは、華やかな正面玄関で、会場が郊外・市街地を問わず必ず設けられる。フェリアの顔。花やカラフルな電球に縁取られ、その土地独特の色やモチーフをデザインに採り入れた巨大な正面入り口は、まさにモニュメント。特に、夜、明かりが灯ったこのゲートは圧巻。
- Casetas 会場内に設置された仮設小屋。セビリアのフェリアが起源で、アンダルシア各地の大・中規模フェリアで次々と採用。簡易構造の屋根つき仮設建物で、壁の仕切りは布。花紙で作ったような花や小旗、ちょうちんが飾られる。
- Chiringuitos 食べ物や飲み物を売る屋台。アンダルシア地方特有の料理や軽いつまみのタパ、また、フェリアに欠かせないマンサニーリャ(manzanilla)―辛口の白ワイン―や、これに炭酸飲料を混ぜたレブヒート(rebujito)をはじめとする各種飲み物はここで。
- アンダルシアン馬 馬もまた、品評会やコンテストの有無を問わず、フェリア会場に欠かせない。優雅なアンダルシア種の馬に乗る騎手(フラメンコドレス姿の女性が後ろに乗っていることも)に、思わず嘆息。
- Traje de Feria フリルが何段にも重なる華やかなフラメンコドレス(vestida de flamenca)は、ジプシーのドレス(Traje de gitana)とも呼ばれる。その昔、定期市にはジプシー女性や田舎の物売りが集まったが、彼女たちはフリルが2-3段ある服を着用。着心地がいいだけでなく、女性らしさを強調するデザインは、やがて上流社会の女性からも注目され、20世紀になると大流行。ショールやネックレス・イヤリングなどのアクセサリーで、美しく着飾るように。その時代ごとにトレンドがあるとはいえ、すっかりフェリア用の服として定着。一方、男性はというと、丈の短い騎手用ジャケット(traje de corto)につばの広い帽子(sombrero cordobes)。これもまた、伝統的には畑や牧草地での作業服で、定期市の取引にこの服装で足を運んだ。つば広の帽子は、アンダルシアの強い日差しを避けるにはもってこい。ところで、この男性用の服を着た女性騎手もいるが、ドレスとは違い、凛とした美しさがある。
- アンダルシア地方の踊りと音楽 もっとも有名なセビリア地方のセビリャーナス(sevillanas)をはじめ、フラメンコ、アンダルシア風にアレンジされたフラメンコ・ポップス、ルンバなどの音楽が一日中どこでも流れ、誰もがリズムにあわせ踊りを楽しむ。
- Calle del Infierno 遊戯ゾーンとしてフェリア会場に隣接、または町の郊外に設けられるアトラクション。「乗り物(cacharritos)に乗りたい!」とねだる子供のお目当ては、この仮設遊園地。その名は「地獄通り(Calle del Infierno)」。観覧車(noria)やジェットコースター(montana rusa)、バイキング船やロデオ、射的など、昔ながらのアトラクションは子供だけでなく、大人も意外に楽しめる。
- Corrida de Toros 闘牛もまた主要都市のフェリアでは欠かせない。フェリア会場から馬車で直接闘牛場に赴く人もおり、闘牛に彩を添えている。
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スペイン語一口メモ Gatoの話
スペイン語のgatoには「猫」のほかにも、色々な意味があります。
例えば、当然ながら「ネズミ捕り」、日本人にもニュアンスがわかりやすい「泥棒」や「ずるがしこい人」という意。また、なぜか「マドリッド生まれの人」。
タイヤ交換などで車体を上げるために用いる「ジャッキ」、物を締め付けしっかり固定するための工具「クランプ」もgatoです。
「現金袋」やその袋内の「お金」という意味にも使われていました。
また子猫という場合、普通、縮小辞「-ito」をつけてgatitoとします。
別の縮小辞「-illo」を用いたgatilloは「ピストルの引き金」になってしまいます。さらに歯医者さんが歯を抜くのに使う「ペンチ」、工具「プライヤー」もgatillo。
さて、日本では犬同様猫もペットとして人気が高いですが、スペインでは猫派は犬派にかないません。猫を飼っているのは外国人、または外国暮らしをしていた人が多いようです。日本ではニャーと鳴く猫、スペイン語ではmauと鳴き、maullarという動詞もあります。最後に、スペインで猫を見かけたら、是非“mismis”と呼んでみて下さい。
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